「劇的な昨夜」インタビュー(第3回:宮沢大和 / ぺぺぺの会)
「せっかく人と作るなら、エラーでもいいし、アイデアみたいなのを混ぜ合わせながら作っていけたらいいな」
(日付 2022年9月17日)聞き手:平井寛人
おんがくのじかんで催される、バーでの演劇ショーケース『劇的』
その第一弾の「劇的な昨夜」を、6つの個性豊かな劇団とお届けします☆彡
【公演詳細】
バーでのショーケース公演「劇的」vol.01 『劇的な昨夜』
2022年10月13日(木)ー16日(日)@東京都 三鷹 おんがくのじかん
みなさん、はじめまして。インタビュアーの平井です
当事務局スタッフがイチ押しの、一癖二癖あるような団体さんから、ここでしか聞けないような話を聞きだしてきました!
「劇的な昨夜」参加団体のカタログ、第3回目のゲストはぺぺぺの会の宮沢大和さんです。
【ゲストプロフィール】
宮澤大和
(ぺぺぺの会 https://pepepepepe.amebaownd.com/)
1995年生まれ。千葉県出身。早稲田大学入学時から演劇活動を始め、2018年11月にぺぺぺの会を 結成。文学性の高い詩的なテキストを紡ぎ、その独創的な演出方法で 学生時代から高い評価を獲得している。シアターグリーン学生芸術祭 vol.13では、優秀賞を獲得。2021年は、演出助手として『虹む街』 (作・演出 タニノクロウ)に参加。2020年には「呆然」戯曲賞自由 部門を受賞。近年は、朝日新聞「あるきだす言葉たち」に詩「信号」 が掲載されるなど、活動の場を広げている。
〜おうち時間にオススメの一品〜
・体幹・体のコアのトレーニング
ポケモンの指人形しか遊ぶ相手がいなくて
宮澤:ぺぺぺの会で作家と演出家として活動している宮澤大和といいます。
僕たちの団体は、千葉大学の劇団個人主義というところから生まれました。だから、旗揚げからいたメンバーは、もともと劇団個人主義のメンバーが多いです。
今は新しいメンバーも入ってきているので、みんなが千葉県出身とか千葉大出身というわけじゃないんですけど、もともとは千葉にルーツがある劇団っていう感じです。
――宮澤さん個人のルーツについてお伺いできますか?
宮澤:僕のうちはすごくインドアで、家族で外に出かけるみたいなのがあんまりなかったんです。
小さい頃からずっと親と、TVドラマを見たり映画を見たりして過ごしてきました。結構大人な内容のやつとかも、ちっちゃい頃――3歳くらいの時から見ていました。
「濃厚なラブストーリーを親と一緒に観る」という家庭で、今思えばちょっと特殊だったかもしれないけど、ずっとそんなふうにして過ごしてきました。
それから、ずーっとポケモンの指人形で物語を作っていて、そういうのが「演劇をやろう」っていうのに繋がったのかなと思っています。
親と映画やドラマを見ていない時間はずっと、ポケモンの指人形で遊んでいました。僕は誰とも喋ることはなく。右手に握った指人形と左手に握った指人形がずっと喋っていました。
今から思えばですけど、僕が演劇をしているのは、そういう生い立ちが契機になっているのかもしれない、とも思うんですよね。
中学校の時には「演劇部っていうのがもしあったら入りたいな」と思っていたんですけど、なくて、高校の時にはあったはあったんですけど、活動をあまりしていないようなところだったので、結局スピーチをする部活(弁論部)に入ったんです。
自分では、スピーチを演劇のかわりみたいに思っていたんですね。
当時から、「絶対、大学では演劇をやろう」と決めていました。
――物語の媒体として、例えば映画ではなく、演劇に興味をずっと持っていた?
宮澤:演劇ですね。
映画にも、興味があるにはあったんですけど、高校で弁論部に入って、舞台上でスピーチをしていたという経験が、演劇を選ばせたんだと思います。
で、演劇サークルの新入生歓迎のための作品をいろいろ見比べて、か「あぁ、いいな」って思ったサークルに入りました。
ルールの中で遊んでもらえるような稽古場を作れたらいいな
――1人遊びから発展して今に至る、という経緯でもあったかと思いますが、他人と一緒に創作するという事に難しさやストレスは感じませんか?
宮澤:最近は「達観しちゃっているかもしれない」と思っています。
僕が演出家をするとして、プランニングしてきたことと同じことをやられるのは、逆にいやだなって感じるんです。稽古場では予想外のことをいつも探していると思います。予想外をピックアップして作っていく。そんなふうにして作品をつくっていると思います。
――「頭の外」での出来事に興味が向けられるようになったというか。
宮澤:せっかく人と作るなら、エラーでもいいし、お互いのアイデアみたいなのを混ぜ合わせながら作っていけたらいいなと感じています。
ただ、大学生の頃はもっと神経質だった気がします。
今は本当に最低限のルールだけ共有して、そのルールの中で遊んでもらえるような稽古場を運営できたらいいなって思っています。
(シアターグリーン学生芸術祭vol.13参加作品『夢の旧作』より、劇中写真)
おばあちゃんおじいちゃんのコミュニティって凄い面白いな
――ぺぺぺの会のメンバーや、運営について聞かせてください。劇団HPにある「ひろば」「ライブ」「あそび」という3つのワードが印象的でした。
宮澤:ぺぺぺの会を結成した段階では、自分も俳優をやっていたこともあって「プレイヤーがどうしたら主体的に、作品作りに関わって楽しんでいけるかな」と特に考えていて、そんな思いから3つの方針(「ひろば」「ライブ」「あそび」)の下で劇団を運営することができたらいいなと。
最終的には、ぺぺぺの会が「居場所」みたいに機能したらいいなとは思うんですよね。
村ですかね。
村とは違うかな。町かな。
村だとなんか嫌になって抜け出す時も色々しがらみがありそうですね。だからなんかちょっと小さめの町みたいな感じなんですかね。
ぺぺぺの会が、町みたいになるといいですね。
村だと、「ひとつの村がひとつの人格」のように機能している感じがあるんですけど、町ってもう少し、個々がはっきりしているというか。
その空気感でいうと、千葉の空気感というのは近いのかもしれない。
千葉って一応、となりに誰かが住んでいたら挨拶もするし、おとなりさんの家族構成も知っているくらいなんですけど、そこまで深入りもしないので、へんにしがらみみたいなものは生じない。
そういえば、僕のおばあちゃんの家が千葉県の〇〇市にあって、遊びに行くと「おばあちゃんおじいちゃんのコミュニティってすごく面白いな」って思って観察しているんです。
彼らって、なんかいい距離感なんですよね。その距離感が理想なのかもしれません。まるで町内会のような。
町内会って直接民主主義的ですよね。
ぺぺぺの会も、話し合いながら諸々決めていくんですけど。
だから、もしも劇団員が3000人なんてことになったら、直接民主主義的に話し合うのも大変になりますよね。
劇団員が増えたとしても、30人くらいなのかな。30人くらいだったらいけそうですね。直接民主主義。
最近は「ゆっくり飲みたいな」みたいな感じ
――好きなものを聞かせてください。
宮澤:カレーとお酒が好きです笑
昔はすごくウイスキーが好きだったんですけど、最近は焼酎ばっかり笑 缶のチューハイって、大体ウォッカが入っているじゃないですか。最近、あれ飲むと具合が悪くなるんですよね。
ちょっと強すぎて。でも日本の焼酎って、比較的優しいじゃないですか。度数が20度とか25度で優しくて。
昔は「早く酔える方がコスパ良いじゃん」みたいな感じだったんですけど、最近は「ゆっくり飲みたいな」みたいな感じなので、度数の柔らかい日本の焼酎を飲んでいます。
カレーに関しては、作ることはなく、めっきり食べる専門なんですけど。
カレー屋巡りなんてわざわざしなくても今はレトルトで結構美味しいのが売られていますよね。
お昼ごはんは、ほとんどレトルトカレーばかりですね。
今イチオシのレトルトカレーは、肉のハナマサで売っている「手羽元入りグリーンカレー」です。
ただ1個のレトルトパウチの中に3人前が入っているので、「手間だなァ」って思いながら、器にあけて冷蔵庫に入れています。
(シアターグリーン学生芸術祭vol.13参加作品『夢の旧作』より、劇中写真)
脳の中が渋滞していく
――創作の原動力、エンジンになっているところを聞かせてください。
宮澤:生きていてモヤモヤすることって沢山あるじゃないですか。
いろんな情報とか、あと、人に触れたりしているとね。
僕は、思ったことをすぐに言語化することができないんです。
だから、一晩眠って、起きあがってストレッチをしているときなんかに、「やっぱりあの言い分は腑に落ち切らないよなァ」なんて思ったりすることがあるんです。
例えば、こんなこともありました。誰かから相談を持ち掛けられたことがあって、帰り道でひとりきりになったときに、「どうして自分はこんなふうに気の利いたことを言えなかったんだろう」って自分を責めることが多々あって——そういう、「言葉にできなかったこと」が創作のエンジンになっているのだと思います。
「言葉にできなかったこと」っていうのを言葉にするためだったり、何らかの形にするために、創作活動を続けている。
そうしないと物事の整理がつかないんですよね。
自分の中でどんどんモヤモヤが溜まっていって、脳の中が渋滞していく。
創作は、もう本当に生理的にやってるようなものです。
「大きな流れ」っていうのが多分大切
――最近観てみて良かったものを教えてください。
宮澤:僕、全然戯曲って読まなかったんですよ。
読み物は小説とかエッセイとかばっかり読んでいて。
ただ最近、久しぶりに戯曲を読み始めました。翻訳物がわりと多いんですけど、ロバート・アイク『ザ・ドクター』が面白かったです。
僕が戯曲を読むときには、ストーリーっていうよりかは、「その戯曲がどんな構造をしているのか」に注目することが多いです。
『ザ・ドクター』は台詞がオーバーラップする箇所が沢山あって、「オーバーラップします」って戯曲中に書いてあるんだけど、実際どうオーバーラップするのかなんて分からないじゃないですか。
だけどある時点から、ちょっと分かってくるんですよね。「あ、こんな感じでオーバーラップするのかな」みたいな。
では、台詞をオーバーラップさせることによって、戯曲は読み手に何を提示しているのか、なんてことを考えるんです。
あとは莊梅岩『5月35日』。
こちらは長めの「語り」がストーリーを進行させていくんですけれど。
「語り」は、読みようによってはひとり語り(モノローグ)っぽくも感じ取れるんですけど、そこに対して共演者がそれなりの応答をするので、結果的にダイアローグになっている、みたいな。
まるで手品を魅せられているかのような、この構成の仕方っていうのがすごく面白いなと感じました。
なかなか人のことって分からないじゃないですか。だから、僕、会話ってうまく書けないんです。
いきなり書こうとすると、台詞のための台詞になったり、物語を進めるための台詞になるのが嫌で。「劇作家として物語を進めようとしちゃっているな」とか、そういう感じがすごい嫌なんですよね。
だから「モノローグからダイアログを立ち上げる」っていうのは自分もやりたいことというか、やろうとしていることに近い。
他人が書いているものにはそこまで気にならないんですけど、自分が書いてる最中のものには神経質になり過ぎてしまう癖が、僕にはあって。ダイアローグが気軽に書けないのはそのせいだと思います。モノローグならまだ気楽に書けるんでしょうけれど。
「大きな流れ」っていうのが多分大切ですよね。「物語が会話で進んでいても、納得できるような大きな流れ」ができている小説だったり戯曲なら良いんですけど、大きな流れがなくて台詞っていう小手先のことだけで物語が進んでいくと深みが無い。
俺が演劇を観ている、観に行っている
宮澤:ちゃんと自分で「俺が演劇を観ている、観に行っているんだ」って思って観たのが多分、大学の新入生歓迎会での公演だったんです。
自分で観に行ったっていうのが、(経験として)やっぱりデカかった。
中学校だったりで学校にやって来て上演する演劇に対しては、僕らは受動的じゃないですか。それに比べて、「自分でチケットを予約して観に行った」っていうのは、やっぱり能動的ですよね。
あぁ、大学演劇を観に行く前に劇団山手事情社さんを観に行ったことがありました。高校のときに、当時付き合っていた彼女が演劇部で。僕のぶんのチケットもとってもらって、いっしょに観に行きました。
できるだけ自然に書いていきたい
――普段の創作のルーティンのようなものがあれば教えてください。
宮澤:僕は飽き性というか、あんまり「自分の創作方法」を信じていなくて、どんどん改良していっているみたいな感じなんです。
なので、作り方は毎回違いますね。
詩で演劇を作っていたときは、自分の詩集を稽古場に持っていって、俳優やスタッフのインスピレーションを借りて一緒に演劇にしていくという感じでした。
今年の12月に上演する『斗起夫 —2031年、東京、都市についての物語—』という作品では、小説から作っているので、描写が細かいんです。
その細かい描写を、俳優と演出家が「どう捨てていくか」っていう感じで稽古が進んでいっています。
詩の演劇では、みんなで「付け加え」をしていたんですけど、小説からつくるときは「捨てていく」。真逆のことですが、同じようなことをやっているなぁって思ったりもします。
戯曲を書くための準備として、メモはとらないですね。というよりは、エッセイみたいなものを書いて自分の頭のなかを整理・分析します。
僕って、「これについて書こう」って思うと書けないんですよ笑 だいぶ不器用なもので……。でも自由連想的に書くことはわりと得意なんです。そうやって、とりあえず2000字くらい、エッセイを書いているうちに、「今の自分が書くべきこと」が見えてくるんです。それが自然にテクスト(台本)になっていく。
「これについて書こう」って思ったことがうまく書けないのは、書いているうちに「不自然さ」感じてしまうからなんですよね。
「誰かに書かされているんじゃないか」とか、そんなふうに思っちゃう。できるだけ自然に書いていきたい。プロットもつくらないし、箱書きみたいなこともしたことがありません。
テクスト(台本)の中で、「自分の私生活の、こういうところが作品に反映されているのかな」っていうのは、書き終わってから感じます。書いているときは、あくまでフィクションを書いている感覚だから、書き終わって、一定の時間が経って、テクストと距離が生まれてくると、そういう分析ができるようになることもあります。
俳優と一緒に喋ったりして、俳優が「こういうところに共感しました」みたいに言ってくれるのを聞いて、「ああ、自分の生活でも似たようなことあったかもしれない」って思いだしたりします。
いま起こっている事に即座に応答できるような作品
――今回ご参加いただく作品は、どんな作品になりそうですか?
宮澤:今回は「いま起こっている事に即座に応答できるような作品」にしたいです。
なんかすごい小さい、身の回りのことです。
ただ、まだ書き終えないうちに、どういう作品なのかを語り過ぎると、いい戯曲は書けないと思うんです。だから語りません。笑
演出家としては、やっぱり、面白そうな作品だなってみんなに思ってほしいじゃないですか。
でも、あんまりいろいろ喋っちゃうと、「面白い作品」っていう枠に縛られ過ぎて、窮屈になってしまう。
なので、最近は書き上がるまでは黙ってるようにしています笑
今はプラットフォームのnoteを使ってエッセイ的なものを書いていって、自分でアイデア出しをしている段階ですね。
タイトルは〆切合わせで決まることが多いです。〆切は大事ですね笑 今回は完本が早くなるのか、〆切が早くなるのか。
おうち時間にオススメなのは「筋トレ」
宮澤:おうち時間にオススメなのは筋トレです。
筋トレの魅力は、自分のフィジカルな部分と対話できる事ですね。
2020年最初に緊急事態宣言が出た時とか、すごいつらかったじゃないですか。
いきなり人と会わなくなってつらいなって思ったんですけど、そういう時間って、自分の精神的なところと対話する時間が増えてくるんです。
「なんで自分は演劇をやっているんだっけな」とか、そんな感じの。
筋トレはそのメンタルとの対話を一旦中断できるのがいいですね。
あとは健康にもいいですからね。
先月からジムにも通い始めました。そこは、トレーナーがいないタイプのジムなんです。
トレーナーがいないジムに行くってなると、やっぱり自重(じじゅう)でのトレーニングにそこそこ慣れていないと難しいかもしれません。
やっているつもりになるのは簡単なんですけど。でも、効率的に筋トレを進めていくためには、筋肉と対話しながらやる必要があると思うんです。自重でのトレーニングはフィジカルとの対話が一番しやすいですから。
そういうのも面倒だという人は、最初からトレーナーがいるジムに行った方がいいと思います。
僕は、一人でコツコツやるのが好きなタイプなので、コツコツ勉強しながらトレーニングしていくのが性に合ってるんです。「ちょっとフォームを変えると、あ、この部位に負荷がかかるのね」みたいなことを考えながら地道にやるのが好きなんですよね。
――これから筋トレしようという人に向けて、オススメのトレーニングはありますか?
宮澤:体幹、コアのトレーニングですね。
体幹を鍛えると腕立てなど、自重トレーニングも正しいフォームでやりやすくなりますし、怪我もしづらくなります。あと、姿勢がよくなります。
ぺペペの会の代表作になるような作品
――最後に記事を読んでいる方へ一言お願いします。
宮澤:ずっと詩で演劇を作ってきたんです。
ただ、最近は久しぶりに物語というか、ストーリー形式の戯曲をやっと作れるようになってきたので――12月の公演(『斗起夫』)は「ぺペペの会の代表作になるような作品を作ろう!」。そんな気概で、メンバーと一緒に作っています。
10月の企画での上演を見てもらったり、このインタビューを読んでもらって気になってもらえたら、是非12月の公演にも足を運んでいただけたら嬉しいです。
◎作品情報◎
ぺぺぺの会「怒る人の気概」
~あらすじ~
誰もが自由に意見を言いあえるようになったSNS以後の世界。それは素晴らしい、夢のような世界であったはず。しかし、少しずつ負の側面が強調されていく2010年代を経て——。演劇はこれからも無事に上演できるか。演劇の未来を考えたくなる《エンゲキ的体験》。
~出演者~
石塚晴日(ぺぺぺの会)、小林彩
~参加チーム・タイムテーブル~
βチーム
2022年10月
14日(金)19:00
15日(土)15:00
16日(日)19:00※
※終演後にアフタートーク有(約20分予定)
受付・開場は開演の20分前。
上演時間は約90分予定(1団体につき約20分の上演+OP演奏15分)。「せっかく人と作るなら、エラーでもいいし、アイデアみたいなのを混ぜ合わせながら作っていけたらいいな」
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